一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

外資系投資銀行の新人研修~ニューヨーク研修~

4月になって「社会人になりました!」と報告してくる後輩もちらほら。この時期はどこの企業でも研修の時期だなぁと思いつつ、自分が外資投資銀行に入社した時の研修を思わず思い出していたので、外資投資銀行の研修、特にいわゆるニューヨーク研修について書いていくことにする。

入社時研修

外資投資銀行の研修は大きく4月の入社時研修と夏の海外研修にわかれる。通常4月に入社した後は、日系企業同様に研修がある。これは企業によってまちまちだが、おおむね2週間から1カ月程度だ。1か月は長い方だが、自分の時はそうだった。ここでは、主に部門紹介を含めた企業のことを知り、社会人の心構えやマナーを学び、ロジカルシンキングやプレゼンテーションについて一通り研修を受けて、最後にグループワークで何かを発表してまとめるというものだ。テクニカルな内容はあまりない。

ニューヨーク研修とは

そのあと5~6月は仕事をして、7月になるといわゆるニューヨーク研修がある。(欧州系の投資銀行だとロンドン研修になるが、ここではニューヨークの場合を前提に話を進める。)


世界中の新入社員が1ヶ月間NYに集まり、会計からコーポレートファイナンスといった投資銀行業務に必要なことをみっちり学ぶのだ。また、トレーダーなどマーケットの人はアジア圏で香港や上海などに集まって研修することもあるようだ。


なぜ7月かといえば、欧米の学期は9月頃に始まって、5~6月に一年が終わるというスケジュールになっているものが多く、7月に入社して研修を行い、9月ごろに各自部署に配属されるというスケジュールになっているからである。


基本的に朝9時から夕方まで講義があり、宿題も出されるし、節目節目でテストもある。地元アメリカの人々は、研修後に各自配属のチームやセクターが決まり、研修中はちょうどオーディションみたいなことをやっているので、テストなどでも良い点を取ることが求められ結構真剣だ。ただ、アメリカで投資銀行で働く人たちはファイナンスメジャー(ファイナンス専攻)の人も多いし、かつ、早い人は大学2年生から投資銀行で夏に2カ月程度インターンをしていてその際にファイナンスについても学んでいるので、内容自体に苦戦する人はあまりいない。


それに比べて海外の人(特に日本)は、チームの配属も決定しており、休暇気分で来ている人も少なくない。ただ、日本の場合はファイナンス専攻の人もあまりいないし、インターン自体も時間が短く大した業務も体験できないので、ほぼ初見に近い人もいて中には苦戦する人もいる。特に会計や財務モデルなどは難しくはないが慣れの問題なので、慣れていない人は意外に大変かもしれない。また、講義が完全に英語なので、そこで苦戦する人も中にはいる。やはり外資系といっても全員が英語ペラペラなわけではないのだ。


外資系なら英語は得意なのが当たり前か - 一鳴驚人日記

ニューヨーク研修で学ぶこと

会計、コーポレートファイナンス(企業に関する内容が中心で、債券数理みたいなことをガリガリやるわけではない)、財務モデル(DCFなど)など、実務的でテクニカルな内容のことが多い。財務モデル作成の一環として、エクセルの使い方(フォーマットのルールやショートカットなど)も教わることができ、これがその後の投資銀行業務で地味に助かった。エクセルの使い方などの部分内容を詳しく知りたい人は、以下の本を見るとよいだろう。

外資系投資銀行のエクセル仕事術

外資系投資銀行のエクセル仕事術


投資銀行は各社とも研修を外注しており外部の講師を使っていた。例えば自分の時はTrain the Street(TTS)が担当していたが、他にもいくつか投資銀行を辞めた人が実務での経験を活かして、研修プログラムを提供するビジネスを行っているところがある。


TTSなどは自習用の教材も売っているようなので、M&Aアドバイザリー業界に転職したい人や実務に興味がある人はこういった教材を見てみるのもいいかもしれない。難点は、教材が英語であるということだが、どれも非常に平易な英語で書かれている。外資投資銀行で活躍したいのであれば、TTSの教材程度のことは理解できる必要がある。



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ニューヨーク研修での自由時間

宿題等もあるものの、夜や週末は時間ができるので、特に海外からきている学生は最初の1~2週間観光をしているひとが多かったように思う。また、外人の友達もできると、パーティなどに誘われることも多い。遊びには違いないが、こういうイベントは「Networking」とよばれ、如何に多くの人と知り合って仲良くなるかということが大事だ。実際、海外とやりとりする際に、カウンターパーティがNY研修で知り合った人だったりすると仕事もやりやすくなる。ジェントルマンズクラブやピアノバーに入り浸る人もたまにいるが、そういう時間の使い方と比べれば、人と知り合える分パーティに繰り出すのも有効なのかもしれない。

最後に

一年目のバンカー(=投資銀行家)はニューヨーク研修前もそのあとも日々詰められて夜遅くまで働くハードな生活なので、ニューヨーク研修は本当に楽しかった思い出がある。まず、睡眠時間が十分にとれるだけでも幸せだった!海外の友達もで、ニューヨーク観光もできた。4月から働くバンカー諸君は是非エンジョイしてほしい。ニューヨークを思う存分楽しむためにも、内定者の段階で会計やファイナンスを少したしなんでおくのもいいかもしれない。機会を改めて内定者にお勧めする専門書についても書くことにしよう。