一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

M&Aのフィナンシャルアドバイザー(FA)って何しているの?~オリジネーション編~

オリジネーション(Origination)とは、案件の発掘のことである。


ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレーなど業界でも有名な会社に所属している場合は、クライアント(業界では顧客をのように呼ぶ)から案件について相談されそのままアドバイザーとして起用されるケースはある。


しかしながら、そういった業界でもトップと目されるようなFAといえども案件を自分で探し、つくらないと仕事にならない。(ただし、日本の銀行系の証券の場合、銀行で融資をしている関係から、相談を持ちかけられて、それが証券部門M&A担当部署に回ってくることによって発生する案件も多いようだ。)


オリジネーションを疎かにすれば、案件フローが滞る。その結果、収益や減るために有能な人材は会社を辞めていき、残った人材も経験がますます乏しくなってしまう。これによって更に、会社としての競争力が落ちてしまうという悪循環に陥る可能性がある。この業界は、会社も個人もたくさんの案件をやっているからこそ、余計にたくさんの案件を依頼されるという面があるのだ。


ではオリジネーションでは主にどのようなことをするかというと、端的に言えば以下の2つ分類される


+ マッチング

  1. ピッチング


以下それぞれについて説明する。

マッチング

マッチングとは、要するに売り手と買い手をお見合いさせることだ。市場には常に成長を求めて買収機会を窺っている企業とノンコア事業や不採算部門を売却したいと考えている企業がいる。FAは、多くの会社に出入りして、常にそういったM&A需要のある会社の動向に目を光らせる。


例えば業績が悪く資金繰りに窮している会社に対して、資金に余裕があり新規事業への投資機会を狙っている会社を紹介したり、ノンコア事業を売却したいと考えている企業の情報を入手して、その事業に興味がありそうな企業を見つけ出すといったようなことをするのである。どちらかというと、売り案件にたいして買い手をみつけるというパターンになり、いわば市場に出回っている案件ベースでのオリジネーションとなる。


こうしたオリジネーションは、いち早く情報を入手すること及び買い手と目される企業へのアクセスがある(普段から懇意にしていて話をつなげるなど)のことが重要であり、パートナーやマネージング・ディレクターといったクライアント企業の幹部・経営陣とコミュニケーションをとるタイトルが高位のプロフェッショナルのネットワークと情報収集力に依存する部分が大きい

ピッチング

投資銀行がクライアント企業にM&A資金調達の提案を行う際に用いる提案書のことをピッチブック、略して「ピッチ」と呼ぶ。ピッチといえば、本来提案自体を指すより広い概念であるが、要するに、「クライアント企業が採るべき戦略を考え、その戦略に合致する買収対象を提案し、経営者に案件の遂行を決断させるように説得すること」である。


こうしたオリジネーションは、企業の事業戦略や業界動向を深く理解している必要があるとともに、M&Aが必要であることを納得させるための説得力のあるプレゼンをする提案力が求められ、提案企業における意思決定上のキープレヤーとも良い関係を築く必要がある。そのため、マッチングよりも難易度が高く、リソース(人員やコスト)も多く必要とし、一朝一夕にできるものではない。


その一方で、こうしたオリジネーションによって獲得した案件はクライアントにも高く評価され、フィー(アドバイザー手数料)も高額となり、案件が成功すれば絶大な信頼とともにその後の案件も任せてもらえるというご褒美がついてくることも多い。


ピッチングを行う会社は、通常セクターごとにチームを編成し、業界に対する専門性を高めている場合が多い。例えば、日系の証券会社や外資投資銀行はそのスタイルが多い。一方で、会計事務所系のFASM&Aブティックはマッチング主体の場合が多いように感じる。

まとめ

オリジネーションとは売り買いニーズのマッチングと戦略に沿った案件の提案である。会社によっては、昔やった案件でクライアントに評価されて「おかかえ」のアドバイザーとなって、最近はオリジネーションを余りやらずに案件がとれるところもまれにあるが、オリジネーションが弱い会社に将来はないので、新たに業界に入る新卒や転職の方はその点もチェックしておいた方がいいだろう。