一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

外資系投資銀行に勤めることはリスクが低い

就活生と話をすると、興味はあるがクビになるリスクが高いので、外資投資銀行よりもメガバンクや大手事業会社などで働きたいという話をよく聞く。

 

いくら給料が高くても、クビになったら困る。それよりも一度入れば、ほぼ一生面倒を見てくれる企業の方が良い。一見さもありなんという主張だ。

 

しかし、本当の意味で問題になるのは、「職がない」場合であって、仮に解雇されたとして、すぐに次の職が見つかれば、問題ないと考えることもできる。その意味で私は外資投資銀行に勤務することは、リスクは低いと思っている。

 

解雇リスクと無職リスクの関係は以下のように表せる。

 

無職リスク = 現職解雇リスク × 再就職不可能リスク

 

すなわち無職になるのは、解雇されたうえで、別の職も見つからないことなのだ。解雇されても次の職が見つかれば実は問題がないのではないか。もちろん、実際には次の職を探すコスト(金銭、メンタル、時間など)や新しい職場になれるためのコストはかかる。しかし、便宜上これらの要素を捨象すると、再就職不可能リスクが十分に低ければ無職リスクも低めることができる。

 

確かに日系の金融機関や事業会社よりもクビになるリスクは高い。しかし、投資銀行の場合、再就職不可能リスクが低いので、結果的に無職リスクは低いのである。

 

自分の投資銀行での勤務期間、退職後も含めて多くの人が退職したが、彼ら・彼女らは退職後、同業他社、PEファンド、事業会社の経営企画、ベンチャー企業の幹部等に自分の希望通りに新たな活躍の場を移している。

 

投資銀行は途中で自発的に辞めていく人も多い。しかしながら、景気が悪く業界でリストラが吹き荒れた際には多くの人が、クビになったが、仕事が見つからないということは聞いたことがない。それどころか新たなやりがいに邁進したり、同じくらい待遇の就職先に移る人の方が多かった。

 

逆に近年は優良な事業会社も倒産しないとは限らない。倒産しなくとも、シャープやパナソニックなど数年前には、「この会社に就職すれば生涯安泰」と思われていた企業が経営難で大量解雇を発表している。勤めていた事業会社の人材に対する転職市場での評価いかんでは、無職リスクが高まる場合もあるのだということは認識すべきだろう。

 

結局事業会社でも解雇リスクは外資投資銀行同様にありながら、給料は事業会社の方が外資投資銀行よりも低い。(もちろん、外資投資銀行の給料が高いのは単に解雇リスクに対するリスクプレミアムだけでなく、長時間労働や精神的なプレッシャーに対する対価という面もあり、その分を差し引く必要はある)そうなると個人的には外資投資銀行に就職するというのは十分魅力的な選択肢と思う。

 

もし就職活動をしていて、投資銀行に興味があるものの、リスクが高いことが心にひっかかっているのであれば、「解雇リスク」ではなく「無職リスク」を考えてみるのをお勧めする。

 

解雇されたとしても、せいぜいもう一度就活する必要があるだけだ。精神的には不安かもしれないが、逆に複数のことに挑戦できると考えればある意味ラッキーでもある。それに自分の転職経験からも、外資投資銀行の勤務経験は自分が思った以上に評価されるようだ。実際にどういった点を評価するのかは、採用側の会社によって異なる点も当然あるだろうが、一つ言えることは外資投資銀行という狭き門をくぐった人は、間違いなく賢いし、体力的にも精神的にもタフで、いっぱしの人材であると認識される傾向があるということだ。

 

 *なお、ここで外資投資銀行とは、投資銀行本部(IBDと呼ばれるような、M&Aや株式・債券の引受業務に従事している部門)のことであり、マーケット側(トレーダーやセールス)はまた事情が異なる。

 

 

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