一般に経済学上の大きな論点の一つに資源の配分を担うべきは市場かそれとも政府かと言うものがある。前者は民営化、規制緩和などを通して政府の役割をより小さくし、市場を通じて経済全体の調整を図ろうとする。後者は、企業の国有化や規制の強化、経済政策の積極活用、公共投資などにより政府が経済の調整役を担うとするべきという立場である。
現在安倍総理は、法人税減税や規制緩和を検討していると報じられているように「小さな政府」を目指す立場にちかいと一見思われるが、経済界に賃上げを求めたり、産業政策を強化していこうとするなど、実は「大きな政府」を目指しているのではないかとも受け取れる。仮に後者が総理の真意であれば、これは非常に憂慮すべきことだと考える。
というのも市場では常に需要をうまく満たすこと(=価値を創造する)で利益を上げることができ、従って財やサービスの供給者はよりよく需要を満たすように努力し、結果として財やサービスが改善され、消費者の利益につながる。
一方で、政府が大きな役割を果たすようになると、如何に規制環境をうまく利用するか、如何に政府の補助金を活用するかという面に、財やサービスの供給者の意識が向かい、最終的に政府との関係が強いものがかつという結果に繋がりやすい。往々にしてその方が、イノベーションを生み出すよりも、容易だからだ。それでは同一の規制環境にある国内では良いかもしれないが、海外では通用しない可能性が高いだろうし、自国の競争力を結果的に蝕んでしまう。
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