一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

フィナンシャルアドバイザー(FA)って何しているの?~FAの仕事の内容~

以前書いた下記のエントリーでFAの一日がどうなっているのかについては多少イメージを持てただろう。


M&Aバンカーって何してるの?~M&Aプロフェッショナルの一日~ - 一鳴驚人日記


しかし、特に就活や転職で投資銀行や日系証券の法人部門M&Aブティック、会計事務所系のFASM&AコンサルティングなどのFAに携わる会社への就職を考えている人の中にはもっと具体的に仕事内容を知りたい人もいると思われるので、今回はFAの具体的な仕事について書いてみたい。

FAとは

M&Aには様々な専門家がアドバイザーとして関わるが、その中でもフィナンシャルアドバイザー(Financial Adviser、通称「FA(読み方は、エフエー)」)とリーガルアドバイザー(Legal Adviser、こちらは特に「LA」というように略すのは聞かない)は特に重要な役割を果たす。では、FAは具体的に何をしているのだろうか。

Financial Adviserという名称どおり、FAはM&Aにおいて財務や経済的な条件をアドバイスするM&Aは、すなわち企業(またはその一部)を売買する取引のことである。取引である以上、条件と値段が重要であり、前者の交渉をサポートするのが弁護士が務めるリーガルアドバイザーであり、後者の交渉をサポートするのがFAの仕事である。


難しく聞こえるかもしれないが、例えば、スマホを買う時を想像してもらえればわかりやすくなるだろう。スマホを買う際には、いくらで、どのような支払い手段で買うのか?ということが気にならない人はいないはずだ。金額だけでなく、クレジット払いか現金払いか?分割か一括か?等の支払い条件によっても、経済的負担は全く異なったものとなる。スマホを企業や事業に置き換えて、そうした経済的な条件について、どの金額で、どのような条件で購入するのが「お得」かをアドバイスするのがFAの仕事なのである。


なおM&Aでは、契約をする前に、買手が買収対象が本当に価値があるのかどうかを検証するデューデリジェンス(Due Deligence、通称「DD」)というプロセスがあるのが一般的である。DDでは、ビジネス、財務・会計、税務、法務、人事、環境その他の分野に関して専門家を起用して調査を実施し、買収対象会社の価値を下げるような要因が存在しないか検証することになる。


この時に起用される専門家もアドバイザーと呼ばれることがある。ビジネス分野は経営・戦略コンサル、財務会計は会計士、税務は税理士、法務は弁護士、人事は人事コンサル、環境は環境コンサルを起用する。この際、法務DDは通常リーガルアドバイザーが兼務すること多いが、財務・会計DDはFAではなく、別途会計士を雇うことになるので、両者を混同しないように注意が必要である。


FAの実態

簡潔に言うと、「FAはM&Aにおいて財務や経済的な条件をアドバイスする」と書いたが、実態としてFAは、もちろん契約内容にもよるのだが、DD及びリーガルアドバイザーの担当分野以外のすべてを、案件の検討開始からクロージング(買収代金の払い込み=買収対象の所有権の移転)時点までサポートする。つまり、基本的に「何でもやる」のである。


潜在的なディールの機会を見出し、買手候補に紹介し、買収チーム組成に必要な他のアドバイザーを紹介し、買収対象の所有者に接触し、企業や事業の価値を試算し、交渉の前面にたって自分のクライアントのメリットになるように交渉を進めて、最終合意に至らせ、クロージングの条件を満たしたか検証するところまでサポートする。


何でもやる」といっても「コアな業務」は存在する。FAが特にバリューを発揮する部分であり、それゆえに特に注力する業務だ。それは

  1. オリジネーション
  2. 交渉戦略
  3. バリュエーション

である。


次回以降はこれらの「コアな業務」について紹介していく。