一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

Intouchables 〜最強の二人〜 【映画】

夜中まで仕事をしていたら、上司が何の前触れもなく「是非みてほしい」と言ってこの映画を勧めてきた。観ていた時に、ふと私のことが思い浮かんだらしい。


そう言われると、見ずにはいられない。週末やり残した仕事はとりあえず後回しにして、無料動画を片っ端から探した。が、どうも著作権の申し立てがしっかり行われているようで、無料のものはなかなか見つからない。


中国語字幕のものを見つけたが、もともとフランス語の映画なのでさっぱり意味がわからなくて、月額動画サービスの一ヶ月無料キャンペーンを使うことにした。



以下、ネタバレを含むので、自分で観るつもりがある人は観てからどうぞ。


映画は、若い黒人と髭面のおっさんがスピード違反してパトカーとのレースの末捕まるものの、機転を利かせて警察を騙して逆に警察を利用するところから始まる。


なるほど、頭も良くてアクションもすごくて、国家権力に屈せず、何か大きな目的を遂行するために動いている…


そういう展開を少し期待させておきながら、決してそういう話ではない。ストーリーを通して語られるのは、本来交わることのない世界に生きる二人の男が深い絆で結ばれていく過程である。


物語は、首から下が不自由な金持ち中年フィリップが、自分の介護役を面接するところから始まる。


資格だの、経験だのを並べ立てる候補者の中で、さっさと就活したというサインをもらって失業保険の申請に行きたがるアフリカ系の体格の良い青年、ドリス。ガサツそうで如何にも教養もなさそうだが、持ち前のユーモアで面接は終始彼のペースで進んでいく。


こうして試用期間付きで採用された彼は、「ない」こと尽くしだった。教養がないどころか字も読めない、常識もない(感覚がないからといって人に熱湯をかけて遊ぶところは爆笑ものだ)


そんな彼は、ひがみもなければ、変な憐れみや同情もない。変に気を使うこともなければ、機嫌をとることもない。


明らかに恵まれていると言えない境遇でも持ち前の明るさとユーモアとガッツで、普通に生活していれば決して出会わないであろう「全く別の世界の住人」であるフィリップの世話という大変な仕事をしっかりやり遂げていく。あとでわかるが、フィリップは決して万人に接しやすいタイプではなく、むしろ気難しい方だ。


ドリスは決して、悲観的なところも見せず、社会に否定的でもない。素直でまっすぐだ。ダメだと思うこと、おかしいと思うことには、はっきりそういう。


フィリップはドリスのそういう素直さに好感をもち、まっすぐなところに共感し、ユーモアでいつの間にか人を巻き込んで楽しくさせる明るさにひかれ、逆境にへこたれないところに勇気をもらったに違いない。


フィリップは、文通している異性に会いたいが、会うのが怖い。写真を送りあうことになっても自分が障碍者であることがわからないような写真を送ってしまう。障碍者であることがコンプレックスなのだ。


そんな彼にとって、形は違えどともに恵まれない背景をもったドリスのポジティブさは一種の支えでもあり、救いともなったのかなと思う。


全く違う世界にすむ二人の男が友情で結ばれ、それぞれ互いがすべきことに向き合うための背中を押すほどの絆を築く。実話を元にしただけあって、リアルかつ胸熱なストーリーだ。


ともすれば、説教くさくなるか、暗いトーンになりがちな介護やマイノリティというテーマを全体を通して笑いもある明るいトーンで描いた名作だった。