一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

M&Aアドバイザリー業界のルー語30選

日常生活で横文字ばかり使う人は「あの人ルー語だよね」と言われて揶揄されるようだが、外資系の金融やM&A業界では日常会話がまさにルー語になっている(もちろん、ルー大柴のように中学レベルの英語ばかり使うわけではないが)と、ときどき業界で働いていて我ながらに思う。

そんな中で、ちょっと面白い記事をみつけた。

【使い過ぎるとカッコ悪い】 IT業界のルー語 BEST40-Six Apart ブログ

記事では

IT業界で使用頻度の高い(と思われる)カタカナ用語とその意味、具体的な使用例BEST40(?)をまとめました。


ということで、IT業界の頻出カタカナ語を見てみると、そのうちの多くが実はM&AのFA業務に携わるプロフェッショナルの間でも頻出で、同窓生が母校のあるあるネタの記事を読んでいるような気持ちになった。IBとかM&Aアドバイザーなどの業界(以下M&A業界)では他にもよくつかわれるカタカナ用語があるので思いつくだけ列挙してみたいと思う。


上記記事にある、アサイン、アップデート、コンセンサス、リスケ、アジェンダ、マター、フィックス等はM&A業界でもよく使う。


それ以外に

アウトプット(Output)

出来上がった資料、試算結果。
(例)分析は一通り済んだのですが、アウトプットのイメージがまだ固まっていないんですよね。

エグジット(Exit)

出口(戦略)、投資においてリターンを回収する方法
(例)エグジットを見据えて投資を始める必要がある

ドラフト(Draft)

素案、作成中の資料を上司に見せるときに一言添えておくと便利な言葉
(例)まだドラフトですが、全体の構成について違和感がないか見て頂けないでしょうか。

センシティビティ(Sensitivity)

感応度。説明変数を1動かした場合に、非説明変数(従属変数)がどれだけ動くか。
(例)ちょっと石炭価格と営業利益のセンシティビティを一枚資料に入れておいてくれるかな。

サマリ(Summary)

エグゼクティブ・サマリ(Executive Summary)として頻出。要するに要約、要旨。大体資料のはじめの方に一枚ほど入れておくもの。
エグザマと略す人も。
(例)サマリが長いからもう少しコンパクトにしよう

ディスカッション(Discussion)

検討、議論。使いやすいのでついつい何でもかんでもディスカッションと言ってしまう。
(例)明日の早い時間に例の件についてディスカッションさせてください

プロジェクション(Projection)

予想数値。主に事業計画の数値について言う。
(例)プロジェクションがないとDCF方でバリュエーションをすることはできません。

ヒストリカル(Historical)

過去実績数値。プロジェクションに対比して使われる。もはや名詞化している。
(例)プロジェクションを分析する時にはヒストリカルとの整合性も見る必要がある。

フィナンシャル(Financial)

PL,BSなどの財務データ一般。
(例)フィナンシャルの分析はすでに終わりました。

マテリアル(Material)

資料。よくディスカッションマテリアルなる資料を作ることになる。
(例)それでは早速こちらのマテリアルに沿ってお話したいと思います。

シナジーSynergy

相乗効果。買収で必ず議論されるが、大抵思ったほどうまくいかない。
(例)本統合によって大きなシナジーが見込まれます。

エクイティ(Equity)

純資産。株主資本価値。デット(有利子負債)とともにバリュエーションの実務上よく使われる。
(例)デットとエクイティのバランスも重要だ。

ファイナンス(Finance)

資金調達。IBが大好きな単語。
(例)この規模のM&Aを実施するのならば、ファイナンスも同時に検討する必要があるでしょう。

バリュエーション(Valuation)

価値評価。企業の価値を評価することや、市場からの評価自体を指す。
(例)対象会社は低いバリュエーションが続いています

エクスペクテーション(Expectation)

期待。クライアントのエクスペクテーションコントロールは何よりも大事。
(例)一流のバンカーはクライアントのエクスペクテーションコントロールがうまい

コール(Call)

電話。電話会議(カンファレンスコール)を略してコールという。
(例)今夜ロンドンとコールがあるから、ちょっと無理だ。

テンタティブ(Tentative)

暫定的な。偉いのスケジュールを見るとたくさん表示されているやつ
(例)テンタティブな予定として会議通知を送っておいてくれますか。

スキーム(Scheme

仕組み、枠組み。組織再編や海外企業の買収の支配関係、資金調達の仕組みなどについて話す時によく使われる。
(例)このスキームは法的に問題があります。

アプルーバル(Approval)

承認。事前にもらっておかないと大変なことになるやつ。
(例)これはMDのアプルーバルが必要ですね。

リサーチ(Research)

調査。
(例)この件については来週までにもう少し詳細をリサーチしておきます。

マネジメント(Management)

経営陣。
(例)最終的にはマネジメントの判断にゆだねるしかない。

コンペンセーション(Compensation)

報酬。バンカーが最も興味があること。ベースとボーナスを合わせてトータルコンペンセーション(Total compensation、略して「トータルコンプ」)という
(例)これが君のトータルコンプだ。

ミスリーディング(Misleading)

誤解を生じさせるような。証券会社が巻末資料につけているリーグテーブルとかが典型。
(例)このグラフはミスリーディングだから、もう少し見せ方を工夫してくれないか。

リスクヘッジ(Risk hedge)

リスクを回避しておくこと。とても大事。
(例)どんな状況においても常にリスクをヘッジしておくことを心がけておきなさい。

ボールパーク(Ballpark)

おおよそ。数字のレベル感を知りたい時とかに。
(例)まずボールパークの数字を把握しておきたい。

アペンディクス(Appendix)

巻末の付録資料。これの厚さにより、チームの責任者の能力とチームメンバーの疲労度がわかる。
(例)使わないと思うけど、とりあえずあアペンディクスに入れておこう。

レビュー(Review)

批評する。上司に資料を見てもらう際に頻出。
(例)資料を作成致しましたので、レビュー頂けますでしょうか。

アサイン(Assign)

割り当てること。特にプロジェクトに人を割り当てる際に使う。
(例)君もうアサインしておいたから。

ファイナライズ(Finalize)

資料を最終版にすること。実際には「ドラフト」という文字をとるだけの場合も多いが、上層部の「ドラフト」へのこだわりは強い。
(例)ご確認頂いた後ファイナライズしてクライアントに送付する予定です。

コンセンサス(Consensus)

全体の総意。統一見解。ロイターやBloombergで入手できるアナリストが予想した財務数値もよくコンセンサスと呼ばれる。
(例)今後変更する可能性は残されておりますが、現在のコンセンサスの計画はこのバージョンです。

ドライバー(Driver)

モデルや分析の中で結果を左右する要素。ゴルフとは関係ない。
「このビジネスのドライバーはやはり客数ですね。単価はほぼ変化しない構造になっています。」

他にもまだまだあるし、もうしばらく考えたらまたボロボロ出てきそうだが、とりあえずここらへんで。業界外の人からすると、こんなのが日常会話で使われてたらわけわからんということになるかもしれないと改めて思う。