一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

目標を持って働くことの重要性

M&Aアドバイザリーをやっていると日々業務に追われて忙しいので(なぜM&Aアドバイザリーはいつも忙しいのか - 一鳴驚人日記)、知らず知らずのうちに、目の前にある業務を如何に早く処理して退社するかを意識するような状態になる。しかし、これではいけないと常々危機感を抱いている。


後述するように、M&Aアドバイザリーという職業はアップサイドもダウンサイドも結局自分の実力やスキル次第だ。そして、実力がつくかどうか、どんなスキルを身につけるかは結局どんな経験をしてきたかに依存する。しかし、身につけるべきスキルを考え、実力がつくように戦略的に経験(=案件)を選んでいかないと、ダウンサイドも回避できないし、アップサイドもとれない。馬鹿みたいに働いたが、結局エクセルスキルが上がっただけということもありうるのだ。

ダウンサイド~M&Aアドバイザリー業界は景気に敏感

M&Aは一般的に景気が良くなると件数も金額も増加し、景気が後退すると減少する傾向にある。景気が良くないときには、事業売却やグループ再編の動きが活発になるものの、企業の財務的な体力が低下する中、やはり大規模なM&Aの戦略を描くことには風当たりも強く、コスト削減が優先され、結果としてM&Aのアドバイザーに対する金払いも悪くなるものだ。M&Aの金額が景気循環に連動することは、下記のグラフからもわかる。

1985年以降のM&Aの案件金額の推移

https://www.recofdata.co.jp/contents/file/201404/kingaku.png
(出所:MARR Online)


企業やファンドM&Aにかける金額が減少するとM&Aアドバイザリー業界に支払われる対価も当然減少する。これは、各ファームの給料やヘッドカウントを直撃する。要するに景気が悪くなると、リストラが始まるのだ。そのような状況で、自分を守ってくれるのは、最終的には自分自身のスキルと経験だ。上司や同僚と良い関係を気付くことはいざという時に自分の身を守る為に重要だが、最後はみな自分がかわいい。結局は、自分に何ができるのかがものを言う。モデリングスペシャリストなのか、DDは一人で担当できるのか、ピッチは作ったことがあるのか。自分に実力があれば、運悪くヘッドカウント削減の犠牲になっても、拾ってくれる会社はある。

アップサイド~昇進も転職も時間の問題ではない

昇進するにしてもやはり強みが必要だ。M&Aアドバイザリーのファームでは、基本的に年功序列ではなく、待っていても出世はできない。むしろ、限られた年数で出世できないと、クビになるシステムを採用していることもある。クロスボーダーや国内再編、TOBLBOなど「こういう取引ならあいつだな」と思ってもらえる方が、社内でも実績を積みやすいし、クライアントを持つようになった場合に、クライアントにもウリができる。


転職でよりよい待遇や機会を手にすることもアップサイドの一つだが、転職する際にも他のプロフェッショナルに負けないスキルが必要だし、それを裏付ける実績が必要になる。

経験は自分から選ぶ必要がある

ダウンサイドとアップサイドのどちらを考えても、スキルを身につけ、実力を蓄えることが重要だということは明確になった。しかし、上司は自分の売上が最優先なので、部下のスキルや経験の最適化なんて考えてくれない。極端に言えば、部下がひたすら雑務ばかりで全くバリュエーションの経験ができなかろうが、それによって自分の売上が達成できれば問題ないのである。


何も考えずにひたすら指示に従っていると、わけわからん案件に放り込まれてやりたくもないことに延々と時間を費やして、楽しくもないのに、スキルも実績も残らないということになることは十分あり得る。


だから、自分が最終的に何を強みにしたくて、そのためにはどのような経験をしていく必要があるのか、今の状況ではその経験ができるのかということを、常に考えて実践していかなければならいない。


自分のことを考えてくれるのは自分だけなのだから。