ブラック企業大賞2013が発表、大賞:ワタミ、特別賞:東北大学、ベネッセも受賞 | ビジネスジャーナル
ブラック企業大賞なるものとはなんぞやと思ってみてたら、営利企業だけでなく東北大学まででているとは。確かに大学院の研究室によっては、教授が神に等しい場合があり、なんの支障もなく卒業できるはずが、教授の逆鱗に触れたために、留年を余儀なくされた話も聞くので、ないことはないのだろう。
ところで、以前自分が働いていた投資銀行のIBD(Investment Banking Division=投資銀行部門)でも、特定の会社に限らず、非常に長い労働時間を課せられ、休暇の取得が一般的に難しく、休日出勤は日常茶飯事、精神的プレッシャーの大きい労働環境、(場合によって)理不尽な上司など、ブラック企業によくある特徴が見受けられたので、その違いに着いて考えてみた。
ブラック企業の定義の詳細はWikibediaを参照(ブラック企業 - Wikipedia)してもらうとして、一部を引用すると、
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義には入社を勧められない労働搾取企業を指す。英語圏では一般的にスウェットショップ(英: Sweatshop)と呼ばれている他、中国語圏では血汗工場(中: 血汗工廠)とも呼ばれる。
すなわち、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為や従業員の健康面を無視した極端な長時間労働(サービス残業)を従業員に強いたりする、もしくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な部分で非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことを指す[1]。
分析するために 以上の定義を要素分解すると、
投資銀行において1と2は多少関連してきてしまう部分もあるが、1はとりあえずクリアしているという前提で、1、4に関しては問題ない。2に関しては確実にブラック的要素がある。3は人によりけりという感じ。
2に関して言えば、平日は毎日9時から27時まで、休日は基本反日しか休めずお昼から夜中まで仕事。給料が高いことは割りと知られるようになっているようだが、時給換算するとマックのバイト以下になることもしばしば。
3に関して言えば、外資系の投資銀行の偉い人は基本的にユニークな人が多い。そして少しでもミスをすると激怒されるか、見下され「使えないやつ」という烙印をおされ、そのうちクビにされるかなので、パワハラがなくても精神的な負担は大きいと個人的に思う。
2,3だけでは厳密にブラック企業の定義に当てはまらないが、一般的には2,3だけでも十分ブラック企業だと認識されてもおかしくないと思う。では、なぜ投資銀行がブラック企業と認識されないのか考えてみると、以下の3点が重要なのだろうという結論に達した。
- 金銭的報酬が良い
- スキルが身につく
- ステータスが有り、プライドをくすぐる
金銭報酬に関して言えば、時給はマックレベルとは言え、初任給は良い時で通常の会社の3倍を超える。
スキルに関して言えば、企業分析、会計、コーポレートファインス、証券に関する知識、M&Aの経験など専門的な知識や経験を得る機会はある。また、専門知識ではないものの、調査する力、段取り力など汎用的なスキルが身につく。専門的な知識や経験を「得る機会がある」と書いたのは、必ず得られるとは限らないからだ。仕事は次から次へと降ってきて、特に若手のうちは雑用が多いので、なかなかスキルアップにつながるような業務を十分に経験できないことも多い。スキルの蓄積が不十分だと任せるのが不安なのでスキルがある人に仕事が流れてしまう傾向も有り、いつまでも専門性が無い仕事をやらされている人は普通にいる。しかし、単調な作業を如何に効率良く終わらせ、つまらない仕事でも学べるものを吸収していくことが、もっと複雑でやりがいがあり、スキルが蓄積される仕事につながるので、高い意識を持ちづづけることが、成長のスピードを左右する。
ステータスに関して言えば、マックの店長よりもバンカー(投資銀行IBD勤務)のほうが聞こえもいいし(ただし、一定程度のレベル以下の人は全く知らないというリスクは有る。)採用は狭き門なので、採用された人は「選ばれた人」と考えることもでき、たとえ仕事の大半が雑用でもプライドをもって仕事ができる。(ただし、「自分何してるんだろ。。。」と考えてしまうことはジュニアバンカーなら一度はあるだろう。特に深夜にだれでもできるような単調作業を延々とやるはめになる時などは。)
Wikipediaの定義には
広義には入社を勧められない労働搾取企業を指す。
とあるが、労働搾取的な面(年棒制でボーナスを除き支払う額が固定なのでできるだけ働かせたほうが企業にとってはお得だし、実際に上司は際限なく仕事をふってくる)はありつつも、以上の3点を踏まえると個人的には入社して損はないかなと思う。
ただし、アナリスト、アソシエイト、ヴァイスプレジデント(VP)、ディレクター、マネージング・ディレクター(MD)とタイトルが上がっていく中で、新卒からMDまで上りつめる人は殆どいなくて、MDは殆ど他者から転職してきた人ということを踏まえると、(配属リスクはあるものの)クビのリスクが低く、トレーニングの時間も相対的に取れる日系で経験を積んでから、外資に移るのも戦略の一つかもしれない。
結局どんなに辛くても、プライドが保てて、スキルアップにつながると思えれば、やりたい人はたくさんいるんだろうし、ブラック呼ばわりする人もあまりいないということなのかもしれない。