一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

株主からの圧力

[FT]大物投資家の登場は米アップル快方の証明? :日本経済新聞

 

下記の株価の推移を見るとアップルの株価は$700をつけていた一時よりも随分低い水準にいて、同社はすでに革新性を失ったのではないかと言われるようになっているものの、それでも一時期世界で時価総額が最も大きい企業だった。

 

Apple Inc.: NASDAQ:AAPL quotes & news - Google Finance

 

米国ではこういった一流企業に対しても常に株主からの圧力がかかっている。成長力が失われ、魅力的な投資案件が見当たらない場合には、増配や自社株買いを通じて株主に資金を返すべきという声が上がるのである。

 

これによって、「魅力的な投資案件は無いし、もしもの時の為に資金を蓄えておこう」ということで現金を貯めこむこともなくなり、投資家に戻された資金は、投資家がリターンを求める限り、よりリターンが高い事業に向けられて、リターンの高い事業に多くの資本が分配されるという最適な資金配分が実現されるのである。

 

有事のために手元資金を貯めておくことは、一見当該企業の危機対応能力を高め、ひいては雇用の維持に貢献するのでいいことしかないように見えるが、そうではない。

更なる成長というアップサイドが無いからこそ、有事の備えが必要という「守り」の姿勢になるのであり、ダウンサイドに気をとられるようになるのだ。

 

更なる成長を目指す企業は売上の増加に知恵を絞るが、有事に備えようとする企業はコストを如何に削減するかに目を向ける。どちらが雇用を増やす傾向にあるのか。どちらが給与水準を上げる可能性があるのか。

 

このようなガバナンスの問題が社会全体の資源配分に影響を及ぼし、ひいては雇用にも影響を与えるのではないだろうか。

 

日本ではいくら手元現預金が積み上がっても、トヨタなどの一流企業に「増配を・自社株買いを」と声高に要求する株主はいないだろうな。