一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

企業の価値は誰が評価するのか

「楽天vsアナリスト騒動」が広げた波紋 :スクランブル :コラム :マーケット :日本経済新聞

 

日経新聞にこんな記事が出てたので少々思ったことを。

 

簡単に言うと、「自社に対する評価の仕方が気に入らないので、評価した証券アナリストを名指しで批判し出禁にしました」ということ。

 

なお、楽天の発表はこちら

楽天株式会社:  三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストレポートについて | ニュース

 

まず、証券アナリストは証券会社や投資銀行に務めている株式の価値の評価をする人たちのことを指し、彼らは「ファイナンス理論に基づく手法を含めた様々な手法」で株価を予想することを仕事にしている。

 

経済金融関連のニュースではテレビで解説をすることもあるし、新聞や雑誌の記事で論評を書くこともあるが、本業は自分の分析を基にアナリストレポートというレポートを出版し、それを投資家(保険会社や投資ファンドなどの機関投資家)に販売したり、ただで贈る代わりに自社の株式セールス部から株の注文を出してもらったりすることである。

 

分析の手法としては、将来のキャッシュ・フローを予想してその現在価値を求めるDCFなどの方法や同業他社と比べた場合の割安・割高を比較する類似企業比較法が一般的だが、中には株主優待券の価値を基準に株価水準を考えているアナリストもいると聞く。

 

レポートも様々で、会社に関するニュースに対して3行で簡潔にコメントをする場合もあれば、企業の製品から顧客まで細かく分析した気合の入ったレポートもある。

 

投資家は証券会社や投資銀行のアナリストのレポートも参考にしながら、株を売ったり買ったりするので、アナリストは自分が担当している銘柄の株価に対してある程度の影響力を持っている(といっても、トンチンカンなことを書いていると投資家から相手にされなくなるので、好き勝手書いていいわけではない)

 

アナリストは基本的に公開情報(=世の中に出回っている情報)をベースに分析することが基本であるがそこには限界がある。しかし、大抵の場合自分が担当している企業とは付き合いがあるので、企業にいろいろ取材し、開示出来る範囲で世の中に出回っていないような情報を教えてもらい、分析に役立てる。

 

 企業は悪く書かれると株価に影響がでるかもしれないので、アナリストのことは無下にできないが、アナリストもあまり悪く書くと取材を断られたりして情報が入手しにくくなってしまう。本質的に両者は実は持ちつ持たれつなのである。決算説明会で社長をしかりとばしたアナリストもいたときいたし、もちろん業績が悪ければ経営陣はアナリストたちから批判にもにた厳しい質問を浴びることもあるが、基本的には一線を超えないようにやっているのだ。

 

それを踏まえると今回のことは、評価する側の証券アナリストと評価される側の企業が健全な関係にあるという証左ともとれる。証券アナリストと企業が「癒着」し、企業が書いて欲しいと考えている通りに証券アナリストがレポートを書いているのであれば、対立は起きない。しかしそれでは企業側の意に沿った評価しか市場に出回らなくなってしまい、ある意味企業価値を操作することが可能になってしまう。

 

一方で、楽天はまさに自社の価値を操作しようとしている。自分が気に入らない分析には情報を与えない。そして公然と批判する。先にも述べたとおり、証券アナリストが頓珍漢な分析をしていれば投資家は、その分析を無視するようになり、そういう証券アナリスト自然淘汰されるはずである。従って、楽天は頓珍漢なアナリストを批判することではなく、自社の成長及びそれが如何に素晴らしい戦略であり展望につながるかという説明にこそエネルギーを費やすべきなのではないだろうか。

 

評価するのは市場である。なぜなら、市場がお金の出し手であり、評価はお金を出すか否かという判断のために行われるからである。そして評価は結果にこそ左右されても情報の限定性に左右されるべきではない。