グラフで見るM&A動向 | M&A情報・データサイト MARR Online(マールオンライン)
M&Aの件数はリーマン後は減少したが、それでも90年代の2倍程の件数で推移しており、ここ2,3年は円高や景気回復にともなってやや持ち直してきている。
1. クライアント企業のノウハウの蓄積
M&Aをすることが増えてくると、武田薬品のようなボルトオン案件も含めて毎年1,2件M&Aを実施する企業も現れ、企業側もノウハウが蓄積してくるので、要求されるサービスの水準が上がるか、あるいは自分たちだけでは判断できない部分についてワンポイントでアドバイザーにお願いし、業務提供のスコープ(範囲)を減らした分、手数料の減額を要求するようなところも出てくる。
2. アドバイザーの乱立
一方で、外資系投資銀行を中心として少数精鋭が基本のM&Aアドバイザリー業界では、景気変動による雇用の増減が大きく、大手の証券会社や投資銀行を辞めた(辞めさせられた)人々が自分たちで始めたり、米国の中堅投資銀行の日本支部を立ち上げたりという事が恒常的にあり、サービスの供給は流入が続いている。(実際の統計次自体を見たわけではないが、以前では聞いたこともないような会社がM&A案件のアドバイザーとして報道されていたり、実際の案件のカウンター・パーティになっていたりする)
こうしてアドバイザリー市場は供給側(=業務提供側)が増加傾向にあり、中長期的にM&A手数料は下落傾向にある。
3. 日本の市場の特性
ここからは私見だが、日本とアメリカを比較した際に、アメリカはAppleやGoogleのようにイノベーションを通じて新たな市場を創出することに関心があるが、日本は品質管理とコストコントロールで市場に参入して制圧するのが得意。アメリカはトップラインを見ているが、日本はコスト削減に重きをおいている当然アドバイザーに関する見方も違う。アメリカはアドバイザーが提供できるものに対して、しっかり払う。日本はサービスが微妙でもいいから安くしたい。
そもそも日本企業、特に製造業は絶え間ないコスト削減がその競争力の源泉である以上、M&A においてもできるだけコストを削減しようとするという考え方になるのもしかたないのかもしれない。しかし、手数料を削られると、アドバイザー側も赤字にならないようにリソースをあまりさけなくなる。当然だ。
M&Aアドバイザーとしていかに付加価値をつけていくのかは、ネームバリューで食っていけない中堅ファームにとって喫緊の課題になっている。