一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

倒産しそうな企業は救済すべきか。

モラトリアム法終了で、倒産は急増するか 苦境続く中小企業 金融円滑化法の功罪 - ライブドアニュース

 

経済学的には政策が無ければ倒産するような企業は、業界内での競争力が足りないか、経済環境の変化によって業界自体がその国で生き残れる状態に無い(=国際貿易における比較優位が失われている)ことになる。従ってそのような企業が淘汰され、その企業に勤務していた人材が他の企業或いは他業界に移ることで、業界全体としての生産性が上がる。

 

これは業界規模でも同じ事が言える。つまりコスト競争力が失われた繊維産業に対して税金を使用して政策的な援助をするのではなく、衰退にまかせることによって、その業界に従事している人材が電機や自動車に移動することでそれらの産業が活性化され、国全体として中長期的な観点での経済成長につながるのである。

 

しかし、現実的にはそんな簡単にはいかない。

下記のTEDの講演で講演者のジェニファー元ミシガン州知事の話で町の工場移転の話が出てくる。

 



 

工場移転が決まり、ジェニファー知事(当時)が工場の従業員とご飯を共にした際に、

「私は48歳です。私も、私の父も、私の祖父もこの工場で働いていました。私は冷蔵庫の作り方しか知りません。一体誰が私を今後雇ってくれるのでしょうか。」(筆者意訳)

 

と二人の子供を連れた工場労働者に言われた。

 

これは非常に本質的で重要な問題だと思う。

 

若い人、例えば学生ならば、衰退企業から成長企業に就職先を変えることも可能かもしれない。しかし、50歳になり、冷蔵庫しか作ったことのない人にいきなり今後はプログラマーが必要とされる時代だからプログラマーになりなさいといっても、その仕事に適応することは簡単ではない。

 

自分が採用担当者だったとして、未経験で将来性が限られている上記のような人を採用するだろうか?

 

もっといえば、もし衰退していく産業のほうが、勃興していく産業よりも雇用吸収力が少なかったらどうするのか?

 

とはいえ、政策的な延命措置は永久に続けることはできない。予算にはかならず財源が必要なのだ。政策でうまくいっていない企業を支えることは、政策でうまく行った企業から所得を移転しているのだ。(もちろん国民全体からも)

 

どのようにスムーズに衰退産業から成長産業に労働力をシフトさせることができるのか。この問題の処方箋を見つけることができたら、きっとノーベル賞ものだろうな。