一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

業界大手と中堅の人材の差【追記あり】

子会社や一部門など事業を売却するM&A案件で、売却側のFA(フィナンシャルアドバイザー)を務める場合、売却事業がDD(デューデリジェンス)を受け入れることを支援することもFAの仕事となる。また、買い手に対して提示する事業計画の策定や経営陣によるプレゼン(いわゆる「マネジメントプレゼンテーション」、略して「マネプレ」)の資料作成も手伝う。


DD受入支援は担当者に準備すべき開示資料を指示したり、買い手からの質問に回答する際の相談にのる。事業計画策定やプレゼンテーション作成は経営企画部や経理担当者と検討を重ね、計画や資料を作成したり、作成を補助したりする。


現在関わっている案件でまさに業界トップ企業と業界中堅企業の両方のDD受入支援と事業計画・マネプレ作成支援を行っていて、業界トップ企業と業界中堅企業は人材の質が異なることがよくわかった。考えてみれば、当たり前のことだが、実際にそれを感じることができたのはやはり新鮮だったので、その違いについて書いてみる。


私が感じた業界トップ企業と業界中堅企業の人材の違いは以下の点である。

1. 自発的に考えて行動する
2. 品質にこだわる
3. プライドを持っている

1. 自発的に考えて行動する

仮に業界最大手の方をA社、中堅企業の方をB社とする。A社は資料の準備を依頼すると、有用と思われる関連資料まで準備してくれる。一を聞いてしっかり考え十を理解するのだ。一方で、B社は一から十まで全てを事細かに指示しないと対応してくれない。趣旨を説明しても、自らの判断をしようとする気はなく、どんなに細かいことでもいちいち指示を仰ぐ。担当者の口癖は「言った通りにやりますから、指示してください」だ。


2. 品質にこだわる

案件用に会社の説明資料の作成を依頼するとA社は忙しいなかでもクオリティを重視して内容を減らすこともせず、むしろ作業が増えることを覚悟してよりよい内容にするために資料を作り込む。一方でB社は、忙しいことを繰り返し強調し、隙あらばクオリティを下げてでも簡単な方に簡単な方に勧め、作業を減らす方向に議論を進める。


3. プライドを持っている

コミュニケーションの中でA社は端々に業界最大手の自負が伺えるが、B社となると「うちはしがない◯◯屋で、たいした人もいないし」という諦めというか、後ろ向きな発言が散見される。実際その通りであり、ある意味身の程を知っているということなのだろう。これ自体いい悪いということではない。リソースを考慮して自社に何ができて何ができないのかを把握することは重要であり、戦略的な行為でもあるからだ。ただ、負けず嫌いさというか、気概、プライドといったものは細部に宿り、最終的なビジネスの結果を変えてしまうのだろうなと思った。



繰り返すが、最大手も中堅もそれぞれの環境やリソースに適した戦略があるので、どちらが良い悪いという話ではない。だか、例えば、就活や転職において、どの企業に行くか迷う場合には、どのような目的意識で働きたいかということを考えてみるのも重要だ。その際には、今回書いたことが参考になるかもしれない。自分は、自分で考えて行動したいのか、言われた通りにやりたいのか?上を目指したいのか、ほどほどに頑張りたいのか?



追記

今回のエントリーはいろいろな方に読んで頂いたようで、賛否様々な反応を頂いた。以下、頂いた反応について自分が考えたことを書いてみたい。

中堅が主体的に良いもの作ってもボツられたら意味ないからだろ。こんなの強者の論理。

担当者のみならず、様々な関係者と接して、まさに多くの人がそのようなメンタリティをもっていた。「主体的に考えて動いたって、結局意に沿わないものができるかもしれず、そうなると二度手間になるので、最初から指示通りにやるのが一番だ」というメンタリティだ。親会社からのコントロールが強い等の理由から、過去にそうした経験があったのかもしれない。

大手か否かは関係ない、担当者個人の仕事への取り組み方の違いや / もちろん大きいところの方がそういう人と出会える確率は高いかもだけど(母集団の絶対数的に見て)

あくまで確率の議論という点はご指摘の通りであり、ここの担当者レベルでみれば例外はかならずいる。しかし、一つの例外のために全体の傾向を否定してしまうと現実世界では何も分析できなくなってしまうのではないかとも思う。一方で、今回のケースだけをもって一般化するには母数が小さいという点は当然あるが、意味のある示唆は読み取れるのではないかと思っている。


あまり詳細に記載をしてしまうと特定できてしまうので、どうしても曖昧な記載にならざるを得ないが、技術力など競争力の厳選が明確でない業界にともに属していて、なぜA社は大手になって、B社は中堅になったのかということを考えた時に、何よりも思い当たる点が人材の質・メンタリティの違いだったのだ。

大小関係ないだろ、外資大手でもHQの言いなりでプライドない連中ばかり

外資系企業に勤めているものの、クライアントは日系ばかりで、外資系企業事情はあまり理解していないので、大変参考になる。自分が勤めているのは、プロフェッショナルファームなので、自分で考えて動けない人は評価も低いし、そのうちクビになるので、どちらかというとA社に近いと思うが、海外の本社のコントロールが強く、日本側では特に決定権がない外資系企業の日本法人などはご指摘の通りかもしれない。