一鳴驚人日記

外資系企業でM&A関係の仕事をしている若僧のブログ。キャリアや時事ネタに関してその時々に感じたことを書いていきます。

アドバイザーはクライアントの気持ちに寄り添えるかが大事

MAの仕事をしていると絶対「無駄だ」と思える作業が発生する。別にクライアントやチームリーダーが無茶ばかり言う人ではなくともそういうことが起こる。


最終的にリスクをとるのはクライアントであり、クライアントの担当者なので、当然担当者は色々な可能性を試したがる。条件を変えて、あれもこれもシミュレーションしてほしがる。あらゆる取引ストラクチャー(取引の構造、方式)の論点を検討してほしがる。アドバイザーはあくまでアドバイザーであり、決定権はない。M&Aのアドバイザーであれば、取引の成立に向けて唯一最善の策がいつもわかるとはいかずとも、考慮しなくて良いような下策は大抵わかるが、そうした進言が必ずしもそれがクライアントの意にかなうとは限らない。クライアントは常に念のため検討しておきたい。


結果として、アドバイザーとしては、「絶対うまくいかない」或いは「最終的にこの戦略は取るはずがない」とわかっていてもやらざるを得ない。もちろん、明らかに当初契約で合意していたサービス以上のことを求められる場合には、範囲外ということで拒否することもあるが、明確に範囲外またはコストオーバーにならない限りにおいてはやることになるし、分析を要請されるたびに「コストが。。。」とは言えない。


M&Aアドバイザーをやりはじめた当初は、なぜこんな絶対うまくいきそうにないことを、クライアントがやると言って聞かないのか、それはまだわかるとしても、アドバイザーのトップである自分のチームのトップも反対しないのかと疑問に思い、愚痴ることもあった。


しかし、今になって思うのは、「無駄だ」と思える作業は実は無駄ではないことだ。


場合によっては、回り道に見えるかもしれないが、一回失敗しないとクライアントが納得せずに成功への道を進めないこともある。表面的には無駄なことをやっているように思えるが、実際には必要なステップだったりする。某役員が無茶を言っていることは、クライアントの現場を含め全員がわかっているが、一度はその通りにやらないと社長まで話が上げてもらえないなんてことは大企業なら日常茶飯事だ。


そして何よりもアドバイザーは結局サービス業なのであり、サービスで顧客を満足させる以上クライアントのやりたいことをやらせてあげたということも重要でありそれも仕事の一部だということだ。サービス業は満足度が命であり、そこには結果だけでなくそこに至る過程も大事なのだ。


結果さえ出せればそれで良いという哲学はかっこいい。しかし、それを常に実践することは現実的に難しい。いくら腕利きのアドバイザーでもうまくいかない案件はある。それはイチローでも10割バッターになれないのと同じだ。残念ながら、アドバイザーとして人事を尽くしても局面を打開するような有効なアドバイスができなかったという結果になることは必ずある。そうした時、これまでの議論を整理したり、突飛な発想でもいろいろ調べて提案してみることで、クライアントに満足してもらえることも多い。


常にクライアントの意向にも配慮し、感情に寄り添うことができていれば、たとえ最終的にうまくいかなくとも、それを責められることは稀だ。結果が全てという立場からすれば、一緒に悩んでいるだけでは、役に立てていないし全然ダメなのだが、頑張りはクライアントは評価してくれるものなのである。クライアントのなんとかしたい!という気持ちにしっかり寄り添うことができれば、失敗したとしても一定の満足度は与えられるものなのだ。


経験やスキルなどを通じて結果を出していけるアドバイザーになることが最も大事だが、アドバイザー業はサービス業なのだということ、クライアントの気持ちに寄り添うことが大切だということを忘れないようにしていきたい。